リビングのテーブルに、「これ、読んでほしいんだ」と言ってボクはそっと便箋を置く。
少し照れくさくて、すぐに視線を逸らした。
母は一瞬きょとんとした後、静かに便箋を開いて文字を追う。
白黒の碁石が詰まった箱を片づけかけていた手が止まり、母の肩がわずかに震えだす。
「夜勤でクタクタなのに、笑顔で「ただいま」って言ってくれた……
負けても次の一手がある……」
読み進めるうちに、母の瞳から大粒の涙がひとすじ、ふたすじと零れ落ちる。
便箋を胸に抱きしめるようにして、母は小さく声を震わせる。
「ありがとう、こんなにも想ってくれて……
本当に……ありがとう……」