病院の屋上に出ると、朝の風が少し肌寒い。
遠くから救急車のサイレンがかすかに聞こえてくる中、ボクは手紙の後半を書き進める。
「高校のとき、あのときの悔しさも、母さんの言葉で乗り越えられた。
「負けても次の一手があるよ」。
その言葉を胸に、いまの僕は医師を目指しています。
本当にありがとう。」
ふう、と息を吐きだしたとき、ポケットの中のスマホが震えた。
「実家」の表示を見て、一瞬ドキッとする。
そこから聞こえる母の声は、どこかはしゃいでいた。
「夜勤明けだけど、あんたが久しぶりに帰ってくるって聞いてさ。
ホットミルクの用意して待ってるから、早くおいで。」