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母と歩む、未来の廊下

17年後のラブレター


数日後。病院実習を終え、夜勤明けの廊下を歩くボク。
すると、先日声をかけてくれた小林看護師が、笑顔で近づいてきた。
「この前、お母さんがね、
「うちの子が医者になって、一緒に病院で働く日が来たら夢みたい」って目を潤ませてたわ。
ほんと、いい親子ね」
そう言って軽く肩を叩かれた瞬間、胸にあたたかなものが込み上げる。
ボクはポケットの中の便箋と母からの手紙をそっとなぞり、
いつかこの廊下を、母と同じように夜勤明けで歩く日が来るかもしれない
そう思うと、不思議と力が湧いてくる。
碁盤の上の白と黒の石、母がくれたホットミルクの甘い匂い、そして「負けても次の一手がある」という言葉……。
それらすべてが、いまのボクを支えているのだ。
「ありがとう、母さん。
あなたがずっと注いでくれた優しさと、教えてくれた「考える力」は、
これからも僕の道標になる」
廊下を照らす朝陽のなか、ボクは静かに笑みを浮かべる。
17年後のラブレターと、それに返す母の手紙は、親子の想いをつなぐ懸け橋。
「次の一手」を信じて歩む未来の先にも、母のぬくもりがずっと続いていると信じられる――そう感じながら、ボクは今日も白衣をまとい、一歩を踏み出していくのだった。