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母からの便箋

碁盤の向こうで、母が教えたかったこと


しばらくして、母は鞄からメモ用紙を取り出し、何かを書き始めた。
震える指で文字を紡ぎ、書き終えると、それをボクに差し出す。
母の細やかな字が並んだ便箋には、こう綴られていた。

お前へ
手紙、読んで泣いちゃったよ。
夜勤でしんどい夜もたくさんあったけど、帰ってきてあなたの顔を見ると「がんばろう」って思えた。
いつも支えられてたのは私のほう。
囲碁を一緒にやりたかったのは、ただの遊びじゃないの。
「相手を思いやる」「先を読む」って、人生にも必要だと思ってたから。
だけど実際は、あなたが泣いたり笑ったりするたびに、私が学ぶこともたくさんあったよ。
医師を目指すんでしょう?これから夜勤まみれで大変になると思う。
でも、疲れ果てたときは、いつでも帰っておいで。
おいしいホットミルクを用意して、碁盤も敷いて待ってるから。
大好きな息子へ
母より

文字を追い終えるころには、ボクの頬にも涙がこぼれていた。
母の想いが、まっすぐ心に届く。