はじめに
囲碁は、日本の伝統文化の中でも特に礼儀を重んじる競技です。 古来より、厳格な礼儀作法が存在し、和の精神に基づいた立ち振る舞いが求められてきました。 歴史的には、礼を失する行為に厳しい罰が下されることもあったほどで、 碁盤の裏にある「血溜まり」と呼ばれる部分は、その名残とも言われています。
現在では、囲碁は国際的に親しまれる芸術的な競技として高く評価され、 礼儀作法は「対局マナー」として知られるようになりました。 ここでは、私が学んだマナーの一端を紹介し、 初心者の方にも日本の棋道の精神を感じていただきたいと思います。
対局者の礼儀作法
対局姿勢と敬意
対局相手には常に敬意を払い、どんな状況下でも真剣に碁に臨みましょう。
勝敗にとらわれすぎず、全力を尽くす姿勢こそが囲碁の品位を支える重要な要素です。
道具への感謝
碁盤や碁石、碁笥は対局者にとって神聖な舞台です。
日ごろから丁寧に扱うことで、囲碁への敬意が深まり、自然と礼儀作法が身についていきます。
対局前の基本マナー
碁会所などで上座と下座がある場合は、年長者に上座を譲るのが基本です。
自分の棋力は具体的な実績とともに正確に伝え、対局をスムーズに進めましょう。
着席後は「お願いします」と一礼し、対局を始めます。
対局中の振る舞い
静寂を守る:思考の競技である囲碁では、対局中は話しかけず、静かに集中しましょう。
相手を尊重:相手を惑わす行為や不快な態度は避けること。
姿勢を正す:畳の間なら正座、テーブル席なら上体を崩さないようにします。
碁石の扱い:着手以外で碁石をいじらず、しなやかかつ決断力をもって置くよう心がけましょう。
終局時の礼
潔い投了:逆転が見込めない場合は「負けました」「参りました」と認めることも品位です。
整地と死に石:終局後は相手と協力して素早く整地を行い、不正を疑われないよう注意します。
感謝の気持ち:勝敗に関係なく、碁石を片付け終えたら「ありがとうございました」と一礼しましょう。
観戦者の礼儀作法
対局中の姿勢
静かに観戦:対局者に話しかけず、助言や叱責も厳禁。
中立を守る:特定の対局者を応援するような行為や表情は控え、公平な姿勢で見守りましょう。
対局後の振る舞い
敬意を表す:終了後は勝者だけでなく敗者にも労いの言葉をかけ、検討に加わる際には 「ご一緒してよろしいですか」と声をかけましょう。
最後に
「水清ければ魚棲まず」という言葉があるように、礼儀作法を押し付けすぎると 人間関係がギスギスしがちです。
本来、礼儀とは他者に強要するものではなく、自分の内なる規範です。
囲碁を楽しみながら自然と身につけていくことで、 心地よい対局空間と豊かな品位が育まれるでしょう。