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宝塚市では、2018年より全市立幼稚園および保育所において 囲碁教育が正式に導入され、2024年現在では全14園(市立幼稚園7園、 市立保育所7所)で実施されています。これは、 宝塚市在住の囲碁棋士であり市大使でもある榊原史子六段の提案を受け、 関西棋院の藤原克也六段が指導を担当している取り組みです。
本レポートでは、この囲碁教育が導入された背景と経緯、 具体的な指導内容や子どもたちに与える教育効果、 地域社会への影響、そして将来的な展望について解説します。 幼児期における非認知能力の重要性を再認識するとともに、 その取り組みが地域全体にどのようなインパクトをもたらすのかを考察します。
榊原史子六段は幼児期における非認知能力、 すなわち集中力や思いやり、自己調整力といったスキルの育成に 囲碁が有効であると考え、2018年に宝塚市へ囲碁教育の導入を提案しました。 これを受け、市立幼稚園・保育所のうち5施設がモデル園として 試験的に囲碁授業を実施し、高い教育効果が認められました。
モデル園での成功を受け、2019年以降、対象となる園が順次拡大。 2024年には西谷認定こども園を含む全14園で囲碁教育が実施されるようになりました。 全市的な囲碁導入は全国初の取り組みとして注目を集め、 幼児教育の先進事例として高い評価を得ています。
宝塚市での囲碁教育は、子どもたちの論理的思考力や社会性を高めるだけでなく、 幼児期に重要とされる非認知能力の育成を主要な目的としています。具体的には、 以下の効果が期待されています。
ゲームを進めながら相手の手を読むうちに、自然と長時間集中できるようになる。
どこに石を置くか考える過程で、論理的に戦略を立てる力が身につく。
勝敗を通じて感情をコントロールし、 相手を尊重する姿勢を学ぶ。
自由な発想と独自の戦略が求められる囲碁ならではの創造的思考を促進。
指導はまず石を交互に置くという単純なルールを中心に、 5歳児(年長組)を対象に行われます。初めは大きな碁盤や カラフルな石を使い、石を置く楽しさを感じながら自然に ルールを習得できるよう工夫されています。
基本を理解したら、2人1組で実際に対局を行います。 子どもたちは石を置くたびに先を考え、相手を読む力を育みます。 失敗や成功の経験を通じて、次の一手をどう打つか自発的に考える姿が 多くの園で報告されています。
対局後、プロ棋士の藤原克也六段が子どもたち一人ひとりに 簡単なアドバイスを行います。「なぜその手を打ったのか」「次はどうすればいいか」 を問いかけながら、論理的思考や戦略的視点を身につけられるよう導きます。
囲碁は勝敗のある競技ですが、挨拶や対局後の礼儀など、 相手を思いやる姿勢を強く重視します。子どもたちは「ありがとうございました」 と言ってお互いを称え合うなど、社会性を自然に学ぶ機会が提供されています。
この取り組みは家庭にも波及し、保護者が子どもの囲碁学習を 支援するケースが増加しています。兄弟で対局を楽しんだり、 地域の囲碁イベントに親子で参加するなど、囲碁が地域コミュニティの 共通言語となりつつあります。また、 「宝塚囲碁フェスティバル」などの行事にも幼児から保護者までが 積極的に参加し、世代を超えた交流が深まっています。
今後は卒園後の継続学習を支援するため、地域の囲碁教室へ スムーズに参加できる仕組みを整備する予定です。また、 小学校段階との連携強化により、論理的思考力や社会性をさらに 発展させることが期待されています。海外の子どもたちとの オンライン対局や国際交流プログラムも視野に入れ、グローバルな 視点を育む計画が検討されています。
宝塚市の全市立幼稚園・保育所で実施される囲碁教育は、 幼児期の非認知能力の育成において非常に効果的なプログラムといえます。 子どもたちはプロの指導のもと、集中力や論理的思考力、 社会性を自然に身につけており、地域全体での囲碁文化の普及にも 大きく貢献しています。今後はさらなる継続学習支援や 国際交流の拡充により、子どもたちがより多面的に成長できる 機会が広がることが期待されます。